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Letter for athlete vol.1 -まず撤退し、距離を取る-
2020年04月07日

新型のコロナウイルスの影響で4/7にも緊急事態宣言が出ると言われています。アスリートの方で日々状況が変わり、世の中の空気も変化していく中で、どのように考えどのように判断すればいいのか迷っていらっしゃる方も多いと思います。そこで、本日から皆さんの参考になればと思い、時間のあるときに私の見解を記していきたいと思います。一つの意見として参考にしてもらえれば幸いです。

まず、緊急事態宣言が出た翌日から、私は皆さんに一旦競技に関連するトレーニングを(部活も含む)少なくとも二週間停止することをお願いしたいです。緊急事態宣言は1ヶ月とも言われていますから、状況を見て1ヶ月間は覚悟しておいていただきたいです。何か補助的トレーニングを行うにしても集団で行うことを避け、安全を確実に確保した上であくまで個人で行い接触を避けることを徹底してください。これまでせっかく作り上げてきたのにトレーニングを止めることに抵抗がある方の気持ちもよくわかりますが、総合的に判断し、一旦停止すべきだと考えています。

まず、感染症特有の問題です。新型コロナウイルスは感染症です。これらは自分1人が感染するだけではなく、他人に感染させるリスクを孕んでいます。いくら自分は自己責任でリスクを取るんだと言っても、もし自分が感染した場合自分自身が他人に感染させることを止められません。他人を巻き込むのです。この新型コロナウイルスの前では、自己責任という言葉は成立しません。ですから一度に全員が足並みを揃えて接触を極端に減らし、感染拡大を防ぐ方法をとるしかないのです。

次に名誉の問題です。現在あまりにもトレーニングができる環境とそうではない環境に差がありすぎます。国内外では自明ですが、国内の中にも自粛でトレーニングを行っていないところから、トレーニングをおこなっているところまで大きな差があります。このような準備の差がある中で行われる競争は公平とは言えません。あくまで公平な条件で競い合った結果の勝利が名誉とするならば、今年度はもはやスポーツの勝利によって得られる名誉は無くなったと言っていいと思います。誰に勝つかというよりも制限の中でどこまで力を出し切れたかに目的は移っています。

最後に、精神衛生上の問題です。アスリートは継続は善であるという世界に生きています。競技を始めてから実は一度も精神的には休んでいないという人も多いのではないでしょうか。これは基本的には競技力向上に善と働きますが、このような日々状況が変わる中において、トレーニングが継続できない自分自身を責めることにもなります。毎日練習不足に悩み不安になり、中途半端な練習を繰り返すよりも、明らかにこのタイミングでは思い切って一定期間休み、何か違うことに夢中になった方が良い結果に繋がります。その方がモチベーションも長続きするでしょう。

今年が最後の年だったという高校生と大学生の皆さん。おそらく今年インターハイが行われるか、インターカレッジが行われるかが揺らいでいます。仮に開催されても、トレーニングができていない状態で万全ではないかもしれません。また開催されない可能性もあります。今までこのためにトレーニングに励んできた気持ちを考えると本当に不安で苦しいのだろうと思います。

私はそれでも、このような不条理な条件の中でもなお希望を捨てず今の自分にできるベストを尽くして欲しいと思います。ベストを尽くすというのは今までの流れを継続することではありません。一旦流れを止めて、制限の中で自分にできるベストを尽くすということです。スッパリと諦めて受験勉強に向かう人もいるでしょうし、就職活動をする人も、試合が行われることを願って競技を継続する人もいるでしょう。どのような選択が正しいとは私には言えませんが、どのような道であっても自分で選んだものであれば必ず人生により効果をもたらします。応援しています。

兎にも角にも一旦流れを止め、静かな時間の中で今を見つめ直していただきたいです。それは自分のためにも社会のためにも大事なことです。今年の後半、試合が行われれば、試合結果は出るでしょう。しかし、先に述べたように今年の勝敗はもうさほど重要ではなくなっています。戦いは個人の心の中に移っています。
少しだけ先輩の私からはっきりと申し上げますが、こういった状況では、誰が勝ったか誰が負けたか、どのような記録が出たかではなく、誰がどのように振る舞ったかの方がよほど皆の記憶にもそして自分の記憶にも残ります。そして、あの時に恥ずかしくない行為をしたという自分の過去ほど将来の自信になるものはありません。他人は騙せても、自分の心はずっと静かに自分のことを見つめ続けているのです。

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