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義理と人情とガバナンス Deportare Partners letterより
2021年03月02日

スポーツの協会はガバナンスが問題だと言われて久しいですが、なかなか状況は改善しません。具体的にガバナンスが効いている状態とはどんな状態なのでしょうか。東京証券取引所では以下の五つのポイントがコーポレートガバナンスにおいて重要だと定義しています。

株主の権利・平等性の確保
株主以外のステークホルダーとの適切な協働
取締役会等の責務
適切な情報開示と透明性の確保
株主との対話

株主をアスリートや市民に置き換えると、なんとなくスポーツ組織に置き換えられそうです。アスリートの権利や平等性が確保されていて、ステークホルダーと適切に協働し、理事会が責務を認識し、情報が開示され透明性が確保され、選手また外部の方と対話が十分になされている。これらがガバナンスが効いている状態と言えそうです。では、なぜスポーツ界ではこれらが機能しないのでしょうか。

例えばスポーツ界は義理人情がとても大切にされる世界です。人の流動性が低く、その世界に長くいる人が多いために、人間関係がとても濃密になっています。先輩後輩、同郷、同じ競技、同じ出身校などは、スポーツ界で大事な要素です。長くい続けると、これらの関係の中で恩と恩返しが行われ、貸し借りが行われ、次第に強い繋がりが生まれてきます。

これは内側にいると、強い安心感を生みます。何かあっても誰かが助けてくれる。先輩が先生が面倒を見てくれる。お世話になったから次の世代に恩返しをする。中にいさえすれば非常に暖かい人間味のある関係性です。

一方裏を返すと、明文化された組織のルールや判断基準よりも、個人間の関係性(貸し借り)が強く出るということだと思います。「正論はそうだけれども、俺たちにはもっと大事な仲間の繋がりってやつがあるんだ」というロジックが強くなるということです。貸し借りが反映された意思決定は、表に説明する時にわかりにくいですから、外に出すことを嫌がります。これではガバナンスが効いているとは言えません。

貸し借りは全て過去に起きた出来事です。もちろん人間ですから、このような関係はありますしそれを重視することは大事だと思います。ただそれが強くなりすぎると、貸し借りがない状態で外から来た人をとても不利な状態に追い込んでしまいます。全くそんなつもりがなくても、身内の関係性を重視するということは新参者を排他する力になります。

またスポーツ界は上を敬う文化が強いですから、組織の構造は若者が動き年長者が敬われる形になりがちです。これ自体は良いことだと思いますが、これが役職とくっつくと最も動きがいい若者は意思決定をする場におらず、意思決定をするポジションは一通り働き終わった方が生活の心配もない状態で、無償で貢献するポジションとして関わることが多いです。

ガバナンスは私流に解釈すると、「それとこれとは話が別よ」をみんながどれだけ貫けるかにかかっていると思います。私自身、いくつかの組織の理事や役員を務めるようになりましたが、最初は冷たい印象を持つことがありました。さっきまでにこやかに談笑していたのに、ならぬものはならぬという空気が急に出てきて戸惑ったものです。裏を返すと、いくらこの人と飲んで仲良くなっても、原理原則から考えてダメだったらダメだと言われるんだなと理解するようになりました。

日本のスポーツ界の課題の一つにガバナンスが弱いことがあげられるのは間違いありません。何をやればいいかは現場ではある程度はっきりしています。例えば
・流動性を高める
・理事(少なくとも実働のトップ)にきちんと報酬を払う
・権威と権力を分ける(過去に貢献した人のポジションは別で作る)
仲間同志の心地よい世界からの脱却は辛いことですが、これをどれだけ覚悟を持ってできるかにかかっていると思います。

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