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好きなことだけで食っていけるのか
2018年08月31日

好きなことだけをやっていきたいが、本当に好きなことだけで食っていけるのか。そもそも好きなことがある人はそれほどいないので、あるだけで才能だと思うけれども、好きなことで食っていけるかどうかということを考えてみると興味深い。

まず、正確に言えば好きなことにそれなりに市場があるものであれば、好きなことで食っていけることはありえると思う。しかしながら、好きなことだけやりたい人の中には、好きなことだけやっていればそれでいいという人と、好きなことでいけるところまでいってみたいという向上心を持つ人がいる。前者の話は成り立つかどうかのシンプルな話だけれど、後者は少しややこしい。

好きなことを高度化していくとどうなるのか。野球が好きな人がいる。夢中でプレイしていたら部活で野球をすることになった。いい高校にも行って甲子園にも出た。さらにプロのレベルでプレイをするようになった。試合に出始めるが、失敗した時に罵りの言葉がくるようになった。あまり人に批判されるのは好きじゃない。いやこれも好きなことの中の一要素なのだからと自分を納得させる。やって行くうちにスランプになることがある。うまくいかなくて悩む。好きなことをやっているのだからといい聞かせるが、それでも打てないことは辛い。楽しかったはずの打席が辛くなる。そもそも打席にも立たせてもらえないことが増える。それでも頑張ってなんとか切り抜けて、すこし思ったようなバッティングができるようになる。ようやくほっとする。練習は辛い。重圧もある。仲間とプレイするのが好きだったがもう同期はみんな切られてしまった。野球が嫌いかと言われるとやはり好きだと答える。しかしただ好きなことだけやっているかというと、好きなことを続けるために嫌いなことも我慢できるというのが実態に近い。

好きなことを追求してしまい、高いレベルにいけばこのようなことが起こる。つまり、好きなことも高度化すればほぼ必ず嫌いなことをはらんでしまう。野球は好きだが、他人からの批判は嫌いな人がいるとすれば、プロの手前までで止めておいたほうがいい。その先の世界には批判がつきまとう。同じように競争が嫌いな人間は世界一を目指さないほうがいい。世界一は一つしかないからだ。

私は走るのが好きだった。しかし、25年やってみて嫌いになりそうなことも、やりたくないこともやった。そうして一通り経た上でやはり走るのが好きだったと思っている。けれども最初の好きとは少し質感が違う。きらきらと目を輝かせるわけではないが、じんわりと心の底から落ち着いて好きだと感じている。

さて、好きなことで食っていけるのかという問いには、好きなことでどこまでいきたいのかと問い直してみたい。好きなことをやれればいいと純粋に思うなら、あとは市場に委ねるだけで良いと思う。一方で、好きの中に競争心や向上心が一定量あるならば、いつの間にか高みを目指してしまい好きなことの中に嫌いなことや苦しみが混じっていくだろう。その世界も悪くないと思うが、多少想像しておかないと話が違うと面食らうことになるので、気をつけたほうがいい。

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